学而05

05 子曰:「道千乘之國,敬事而信,節用而愛人,使民以時。」
Zi3 yue1: “Dao3 qian1sheng4 zhi1 guo2, jing4 shi4 er2 xin4, jie2 yong4 er2 ai4 ren2, shi3 min2 yi3 shi2”.

 「道」は「音導」(釈文)。
 「千乘」の「乘」は去声(釈文)。『新華字典』でいうと、第2の音の第2義「量词,古代用于四匹马拉的兵车」に当たり、そこに例として「千乘之国」が挙げられています。

学而04

04 曾子曰:「吾日三省吾身。為人謀而不忠乎?與朋友交而不信乎?傳不習乎?」
Zeng1zi3 yue1: “Wu2 ri4 san1xing3 wu2 shen1. Wei4 ren2 mou2 er2 bu4 zhong1 hu1? Yu3 peng2you3 jiao1 er2 bu4 xin4 hu1? Chuan2 bu4 xi2 hu1?”

 「曾子」は、孔子の弟子の曾參(Zeng1 Shen1、そうしん)。
 「曾」は精母の読み(zeng1)と従母の読み(ceng2)とがありますが、ここは「姓」ですから前者。
 「參」は『新華字典』に、can1, shen1, cen1と、三つ音が並びますが、ここは第二の音で読んでおきます。厳密に言うと、「釈文」には「所金反(shen1)」「七南反(cen1)」という二つの反切を挙げますので、 二通りの読みが六世紀頃にあったことになりますが、「釈文」の第一の読みに従います。
 「三」についても「釈文」は「息暫反(san4)」と「如字(san1)」の二つの読みを挙げます。ただ、現在は一般に去声(san4)の読みは使わないので(『辞源』)、普通に平声で読んでおきます。
 「省」は「悉井反(xing3)」(釈文)。 
 「為人謀」は「釈文」に去声の読み「于偽反(wei4)」と「如字(wei2)」とを載せますが、ここは前者に従います。
 「傳不習」の「傳」は平声(chuan2)、(釈文)。

学而03

03 子曰:「巧言令色,鮮矣仁。」
Zi3 yue1: “Qiao3yan2 ling4se4, xian3 yi3 ren2”.

 「巧言令色」は「指用動聴之言和諂媚之態取悦於人」(『辞源』)。『辞源』は書証として、『尚書』皋陶謨と『論語』のこの部分とを挙げています。
 「令」は『釈文』によると平声(ling2)ですが、『新華字典』『辞源』では去声で読ませています。これに従います。
 「鮮矣仁」の「鮮」は上声(釈文)。

学而02

02 有子曰:「其為人也孝弟,而好犯上者,鮮矣。不好犯上,而好作亂者,未之有也。君子務本,本立而道生。孝弟也者,其為仁之本與!」
You3zi3 yue1: “Qi2 wei2ren2 ye3 xiao4ti4, er2 hao4 fan2 shang4 zhe3, xian3 yi3. Bu4 hao4 fan4 shang4, er2 hao4 zuo4 luan4 zhe3, wei4 zhi1 you3 ye3. Jun1zi3 wu4 ben3, ben3 li4 er2 dao4 sheng1. Xiao4ti4 ye3 zhe3, qi2 wei2 ren2 zhi1 ben3 yu2!”

 「有子」は、孔子の弟子、有若。
 「為人」の「為」は平声、「為仁」の「為」も同じ。
 「孝弟」の「弟」は「悌」に作る本もあった(釈文)。
 「好犯上」の「好」は去声(釈文)。
 「鮮矣」の「鮮」は上声(釈文)。
 「本與」の「與」は平声(釈文)。
 『論語』に見える孔子の弟子のうち、有若と曾参のみが、「子」を添えて「有子」「曾子」と呼ばれています。このことから、『論語』は孔子の弟子ではなく、有若・曾参の弟子が編纂したものでないか、との説が古くからあります。程頤『経説』など(程樹徳『論語集解』を参照)。

学而01

01 子曰:「學而時習之,不亦説乎?有朋自遠方來,不亦樂乎?人不知而不慍,不亦君子乎?」
Zi3 yue1: “Xue2 er2 shi2 xi2 zhi1, bu4 yi4 yue4 hu1? You3 peng2 zi4 yuan3fang1 lai2, bu4 yi4 le4 hu1? Ren2 bu4 zhi1 er2 bu4 yun4, bu4 yi4 jun1zi3 hu1?”

 『新華字典』を引いていただくと、だいたい分かると思いますので、分かりにくいところ、問題のあるところだけ、説明します。『経典釈文』(「釈文」と略称)による説明が主体です。
 「説」は「音悦」(釈文)。
 「樂」は「音洛」(釈文)、『新華字典』は「一 le4」「二 yue4」の二音ですが、その前者です。
 あとは、繰り返し口に出して読み上げ、暗誦してください。一日ひとつのペースで進みましょう。

『論語』学而篇

01 子曰:「學而時習之,不亦悦乎?有朋自遠方來,不亦樂乎?人不知而不慍,不亦君子乎?」
02 有子曰:「其為人也孝悌,而好犯上者,鮮矣。不好犯上,而好作亂者,未之有也。君子務本,本立而道生。孝弟也者,其為仁之本與!」
03 子曰:「巧言令色,鮮矣仁。」
04 曾子曰:「吾日三省吾身。為人謀而不忠乎?與朋友交而不信乎?傳不習乎?」
05 子曰:「道千乘之國,敬事而信,節用而愛人,使民以時。」
06 子曰:「弟子入則孝,出則弟,謹而信,泛愛衆而親仁。行有餘力,則以學文。」
07 子夏曰:「賢賢易色,事父母能竭其力,事君能致其身,與朋友交言而有信。雖曰未學,吾必謂之學矣。」
08 子曰:「君子不重,則不威。學則不固,主忠信,無友不如己者,過則勿憚改。」
09 曾子曰:「慎終追遠,民紱歸厚矣。」
10 子禽問於子貢曰:「夫子至於是邦也,必聞其政,求之與?抑與之與?」子貢曰:「夫子温、良、恭、儉、讓以得之。夫子之求之也,其諸異乎人之求之與!」
11 子曰:「父在,觀其志。父没,觀其行。三年無改於父之道,可謂孝矣。」
12 有子曰:「禮之用,和為貴。先王之道斯為美,小大由之。有所不行,知和而和,不以禮節之,亦不可行也。」
13 有子曰:「信近於義,言可復也。恭近於禮,遠恥辱也。因不失其親,亦可宗也。」
14 子曰:「君子食無求飽,居無求安,敏於事而慎於言,就有道而正焉,可謂好學也已。」
15 子貢曰:「貧而無諂,富而無驕,何如?」子曰:「可也。未若貧而樂,富而好禮者也。」子貢曰:「『詩』云:『如切如磋,如琢如磨。』其斯之謂與?」子曰:「賜也,始可與言『詩』已矣!告諸往而知來者。」
16 子曰:「不患人之不己知,患不知人也。」

*『新華字典』を使い、ご自分の力でピンインを振ってみて下さい。『千字文』を終えられた皆さんなら、きっとできるはずです。

双声・畳韻語まとめ

 漢語の語彙のうち、双声・畳韻語を理解することが重要であると、縷縷述べてきました。ここで、一度、まとめをしておきます。

 私の理解する双声・畳韻語の定義は次の通りです。

双声語は声母が共通する二字を連用する語。
畳韻語は韻母が共通(あるいは類似)する二字を連用する語。

 しかし、双声・畳韻語が成り立つためには、以下の諸条件がみな備わっているべきであると考えます。

  • 複数の表記を持つ(音を中心としており、表記に自由度があるため)。
  • 熟している(特定の個人が意図して作り、それが広く用いられることがなければ、双声・畳韻語と認めない)。
  • 双声・畳韻語に用いる二字は、互いに同等の文法的機能を持つ(動賓構造をとったり、修飾関係を持ったりしない)。

 実際的に声母と韻母とを調べる場合、私は郭錫良『漢字古音手冊』(北京大学出版社、1986)を見ます。同書を用いて、上古音と中古音の音韻地位と推定音価とを調べます(あくまで、便宜的な方法なので、参考程度にしてください)。畳韻語の場合ならば、段玉裁『説文解字注』で上古音の韻部を確認してすます、というのでもかまいません。

 そのうえで、『辞通』に当たって調べてみると、「複数の表記をもつこと」「熟していること」などを確認でき、それ以外にも、いろいろなことが分かるはずです。