011を読む

011 始制文字 乃服衣裳
  Shi3 zhi4 wen2zi4, nai3 fu2 yi1chang2.

 「始」は、『新華字典』では「开始,起头,最初,跟"末"相对」を第1義としますが、第2義が副詞で、「才」と定義されています。これを採ります。
 「制」は第1義。
 「文」は第3義を見ると、「文字」と定義されており、また「字」の第1義にも「文字」という定義があります。この2字で熟していることがよく分かります。
 「乃」は、第2義に「副词,才,就」とあり、「始」ときわめて近い副詞ですね。
 「服」は第2義です。
 「衣」は多音字で、「一 yi1」(中古音の「平声」、名詞)、「二 yi4」(「去声」、動詞)という区別がありますが、ここでは前者、その第1義です。「衣服(fu)、衣装(shang)」と定義されています。「衣裳」と熟しているわけですね。
 次に「裳」を引いてみると、「一 chang2 遮蔽下体的衣裙」「二 shang [衣裳]衣服」とあります。後者には、声調の記号が付いていません。こういう声調のないものを「轻声qing1sheng1」(軽声)と呼びます。現代中国語にはわりあいと多くありますが、文言を読む時には「轻声」は用いず、必ず声調をつけて読みます。注意してください。ということは、ここも前者を採ることになります。「衣」のところでわざわざと「衣装(shang)」と説明されていますが、文言では「yi1chang2」と読むわけです。
 対句になっており、「始」「乃」が連用修飾語で副詞、「制」「服」が述語で動詞、「文字」「衣裳」が名詞で目的語、という構造です。
 この第11行では、はじめて「始」「乃」と副詞が出てきました。これまでは、すべて名詞・動詞・形容詞で語られていたわけですから。より味わい深い文言が現れたわけです。副詞・接続詞・前置詞・助詞・嘆詞など(あわせて虚詞と呼びます)は、文言の文法の中できわめて重要な機能を担っている品詞で、漢文訓読の欠点のひとつは、これらの含意を正確に反映できないことにあるとされます。
 初級ではまだそれほど神経質になる必要もありませんが、機会があれば、虚詞の学習法なども述べてみたいと思います。