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南北朝の鳳凰

017 鳴鳳在樹 白駒食場
  Ming2feng4 zai4 shu4, bai2ju1 shi2 chang2.

 この2句は、いずれも『詩経』を出典とする句です。上の句は、『詩経』大雅「卷阿」の詩に「鳳皇鳴矣,于彼高岡」とあるのにより、下の句は同じく『詩経』小雅「白駒」の詩に「皎皎白駒,食我場苗」とあります。「鳴鳳」と「白駒」、どちらもめでたい動物で、暗に賢人の譬えであるとされます。
 経書の中でも、『詩経』『尚書』に出典のある語句は、かなり省略されたかたちで引用され、さまざまな含蓄がこめられることがあるので、注意が必要です。
 では、『新華字典』を調べてみましょう。
 「鳴」は第1義。「鳳」は1義のみです。「鳴鳳」で熟しています。
 「在」はなかなか厄介な字です。第1義から第6義までありますが、よく検討してみてください。この「在」は、次の句の「食」と対になっていますから、動詞のはずです。そこで第1義から第3義までにしぼれます。第2義の定義に見える「地点」という概念に気づけば、これに決定できますね。
 「樹」「白」「駒」はそれぞれ第1義。
 「食」は多音字で、「一 shi2」(中古音の入声)、「二 si4」(中古音の去声)の2音です。ここでは、前者の第1義です。
 「場」も多音字で、「一 chang2」(中古音の平声)と「二 chang3」(中古音の上声)の2音で、意味を見比べても、どちらを選べばよいのか戸惑うかも知れませんが、ここでは前者です。近似値として第1義を採りましょう。行の最後は韻字で、そしてこの部分、平声で韻を踏んでいるので、意味を考えるまでもなく、平声の「chang2」を選びます。
 文法的にいうと、対句になっていて、「鳴鳳」「白駒」がともに主語(そして名詞)で、「在」「食」がともに述語(そして動詞)、「樹」「場」がともに目的語(そして名詞)です。
 『詩経』が出典にあることを知らなければ、「鳴鳳」「白駒」の対は不審かもしれませんが、知っていれば納得できるでしょう。