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025 墨悲絲染 詩讚羔羊
  Mo4 bei1 si1 ran3, Shi1 zan4 gao1yang2.

 「墨」は、すでに注記したとおり、ここでは墨子という古代の思想家を指します。この1句は、『墨子』(所染篇)という書物の中にあるエピソードに基づいています。「絹糸がさまざまな色に染め上げられていくのを見て、墨子が嘆いた」というものです。固有名詞の語義を調べても仕方ないように思われるかも知れませんが、これも『新華字典』の第1義を採っておいてください。
 「悲」は、第1義と第2義、重なる範囲もありますが、ここは後者「怜悯」です。
 「絲」は第1義です。日本語の「糸」とは意味が違います。
 「染」も第1義です。
 「詩」は1義のみ。ただし、ここでは書物の名称としての『詩』であり(『詩経』のこと)、一般名詞ではなく、固有名詞です。
 「讚」は、『新華字典』では「赞(賛、2.3讚)」の第2義「夸奖,称扬」を採ります。
 「羔」「羊」はそれぞれ1義のみです。ここでは、「羔羊」は『詩経』召南の中の詩、一篇の篇名です。
 この1行もゆるやかな対句になっています。「墨」「詩」が主語(名詞)、「悲」「讚」が述語(動詞)、「絲染」「羔羊」が目的語です。ただし、「絲染」「羔羊」をさらに分解すると、これは対になっていません。「絲染」の方は、「絲」が主語(名詞)で「染」が述語(動詞)という構造ですが、「羔羊」の方は二つの名詞を結合させて2字の名詞としたものです。
 このように、文法的には完全な対句とはいえませんが、墨子の方は交際を慎重に選ぶべきこと、「羔羊」の方は行いの高潔を貫くことを述べた典故を踏まえ、処世のあり方と説いたもので、対の意図は比較的明確です。