耳で聴く中国古典

 たとえ『千字文』をすべて覚えたとしても、古典に出てくるすべての文字を自由自在に中国音で読むのは、容易ではありません。いちいち自分で『新華字典』を調べることも、たしかに必要ですが、少し時間がかかるので、早くたくさん読むことができません(慣れればもちろん早く読めますが)。そこで、とっておきの方法を紹介します。これで、古典をたくさん読むことができます。

 それは、中国で発売されている古典の朗読CDを聴きながら、目で古典を読む方法です。耳から中国音が聞こえ、目からは古典の本文が入ります。いちいち音を調べる必要はありませんし、読み上げのスピードについてゆくので、とても早く読めます。

 以前、動画サイトに載っている『千字文』の朗読をご紹介しました。今日は、『論語』のCDを紹介します。

論語』(上・下)
 出版社:九洲音像出版社
 発行公司:天藝音像制品有限公司
 ISRC:CNA650754800

 使う『論語』の本文は、何でもよいのですが、以下のものをおすすめします。

楊伯峻『論語訳注』(中国古典名著訳注叢書、繁体字版)
 出版社:中華書局
 出版時期:2009年
 ISBN:9787101070248

 『論語』は20篇から成りますが、CDの朗読は、1篇あたり10分程度なので、『論語』全篇をさっと読むことができます。もちろん、それで内容をすべて理解できるわけはありませんが、何度も繰り返し聴けばよいのです。

 そこからさらに音読や暗誦に進むこともできますし、また、句読に注意して聴けば、『論語』の文章の呼吸を体得することができます。

 なお、『論語訳注』の文句とCDの文句が違ったり、CDの読み方の根拠が疑わしいものもありますが、そういう細かいことに最初からこだわる必要はありません。何度も繰り返し聴いて内容を耳から理解できるようになった時点で、注意すれば十分です。

 朗読CDとして、私はそれ以外にも、『千字文』『老子』『荘子』『楚辞』『唐詩三百首』などを持っていて聴いています。通常、目からの学習が過度に強調されていますが、耳からの学習も同様に重視すべきでしょう。