062を読む

062 府羅將相 路俠槐卿
  Fu3 luo2 jiang4xiang4, lu4 jia1 huai2qing1.

 この行は、宮中から眼を外に転じて、「將相」「槐卿」の様子を描きます。
 「府」は『新華字典』の第2義です。
 「羅」は第3義「散布,陈列」です。
 「將」は「一 jiang1」(中古音の平声)、「二 jiang4」(中古音の去声)の二音あります。ややこしいのですが、同じく軍事上の責任者を表す場合でも、「將軍」という場合は平声で、「將相」「將臣」「將」などの場合は去声で読んでいます。もともと「率いる」という意味の動詞で、「軍を率いる者」の意の「將軍」はもとの音である平声で読むのが、そこから派生して「將」のみで軍事責任者を表すようになり、その場合は去声で読むようになったものと想像できます。ここでは後者、その第1義です。
 「相」も「一 xiang1」(中古音の平声)、「二 xiang4」(中古音の去声)の二音あります。ここも後者、その第3義「辅助,也指辅佐的人,古代特指最高级的官:宰相」です。「將」「相」ともに、この文脈では去声で読むわけですが、声調により読み分ける場合、「去声で読むのは派生的な意味」だという原則を思い出してください。
 「路」は第1義。
 「俠」は『新華字典』では「xia2」の音のみ載っていますが、ここでは「夾 jia1」に通じています。その第1義「从东西的两旁钳住」です。
 「槐」は1義のみ、樹木の名前です。
 「卿」は第1義「古时高级官名:上卿,三公九卿」です。なお、「槐卿」で熟語となっており、「三公九卿」を意味します。
 この行は鮑照(405-466)の「結客少年場行」(『文選』巻二十八)に「扶宮羅將相,夾道列王侯」とあるのに基づくようなのですが、『千字文』で何を伝えようとしているのか、今ひとつはっきりしません。一見して対句ですが、前句は分かりよいのですが(「府」が主語、「羅」が述語、「將相」が目的語)、それに合わせて後句を読もうとしても、うまくゆかないのです。鮑照の対句からはずれているのですね。