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095 渠荷的歴 園莽抽條
  Qu2he2 di4li4, yuan2mang3 chou1 tiao2.

 長らくお休みさせていただきましたが、『千字文』、再開いたします。よろしくおつきあい下さい。
 「渠」は『新華字典』の第1義、「水道。特指人工开的河道,水沟」です。
 「荷」は「一 he2」「二 he4」と声調により読み分けますが、ここは前者、「莲」です。
 「的」も多音字で、「一 di4」「二 di2」「三 de」と読み分けます。現代中国語を学習された方なら、現代中国語においては第三の音が非常によく使われることをご存じのはずですが、文言ではこの音で読むことはありません(『新華字典』でこの音を第三の発音としていることから、「本義から派生義へ」という『新華字典』の方針が見て取れます)。ここはとりあえず、第一の音で読むと思ってください。「的歴」は畳韻語です。
 「歴」は第2義の熟語として挙げてある「历历」が近いと思います。第2義ごと採ってください。
 「園」は第1義。
 「莽」も第1義。
 「抽」は第2義「长出」で、「谷子抽穗」の例が挙げてあります。
 「條」は第1義です。
 以上、「渠荷」と「園莽」とを対にして、全体も一見すると対句でできているように思えるのですが、前句の「的歴」が畳韻語であるのに、後句の「抽條」は実は畳韻語ではありません。すでに重要な漢字、800字近くを使い切ってしまい(『千字文』では字を重複して出すことをしないので)、段々と選べる文字が少なくなり、「的歴」に対応する畳韻語を見つけられなかったのでしょう。
 畳韻語はさまざまに表記されるので、「的歴」は、「的藋」「的皪」などとも書かれます。『文選』に収録されている司馬相如の「上林賦」に「明月珠子,的皪江靡」と見えるのが古いようです。