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正倉院北倉の御書箱

099 耽讀翫市 寓目囊箱
  Dan1du2 wan2 shi4, yu4 mu4 nang2xiang1.

 「耽」は『新華字典』の第2義。
 「讀」は多音字で「一 du2」(中古音の入声)と「二 dou4」(中古音の去声)の二音ですが、ここは前者、1義のみです。「依照文字念」とありますから、音読のことです。
 「翫」は「玩」の第3義から第5義のうちのいずれかということになりますが、ここでは第3義です。
 「市」は第1義。
 「寓」は第3義「寄托,含蓄在内」の熟語として「寓目」が挙げられています。
 「目」は第1義。
 「囊」は「一 nang1」「二 nang2」と読み分けるそうですが、ここは後者の「口袋」です。
 「箱」は第1義「收藏衣物的方形器具,通常是上面有盖扣住」ですが、ここは衣服ではなく、書物をしまう箱のようです。
 この行は、後漢の王充の故事を典故としています。すなわち、『後漢書』列伝三十九の王充伝に「家貧無書,常游洛陽市肆,閲所賣書,一見輒能誦憶,遂博通衆流百家之言」とあるのによります。「囊箱」も書物をしまう収納具で、市場でそれらに目を光らせて書物を狙え、といっているわけです。