112を読む

112 骸垢想浴 執熱願涼
Hai2 gou4 xiang3 yu4, zhi2 re4 yuan4 liang2.

 この段落も終わりに近づき、やはり意味的な接続はとりがたくなってきました。
 「骸」は『新華字典』の第2義「指身体」です。
 「垢」は第1義。
 「想」も第1義でよいでしょう。
 「浴」は1義のみ。
 「執」は、とりあえず第1義「拿着,掌握」を採っておきます。
 「熱」は第2義「温度高」。
 「願」は第1義。
 「涼」は「一 liang2」「二 liang4」と声調により読み分けますが、ここは前者の「温度低」です。
 ここで理解しづらいのは、「執熱」の一語です。これは『詩経』大雅「桑柔」に「誰能執熱,逝不以濯」とあるのを典故とします。「熱い物体を手に取る」という解釈がある一方、段玉裁は「酷暑に苦しむ」意であるとします(詳しくは『漢語大詞典』に説明があります)。
 段玉裁に従い、「暑い盛りには一風呂浴びたくなる」と理解する方が、この『千字文』の理解もしっくりきますね。