111を読む

111 牋牒簡要 顧答審詳
  Jian1die2 jian3yao4, gu4da2 shen3xiang2.

 一見、前行「稽顙再拜,悚懼恐惶」との接続の意図が分からないのですが、小川環樹氏が、「稽顙再拜」「悚懼恐惶」とも、手紙の挨拶に用いる語であるから、「牋牒」「顧答」が導かれた、と言われるのは(「韻文として見た「千字文」」、岩波文庫本所収)、慧眼です。連想により、この句が出てきたわけですね。
 「牋」は、『新華字典』の「笺」の項の第2義を見るのですが、そこに「小幅的纸」とあり、「便笺」「信笺」の例が挙げられています。
 「牒」は1義のみ。
 「簡」は第2義。
 「要」は「一 yao4」「二 yao1」と声調により読み分けますが、ここは前者の第2義「重大的,值得重视的」。
 「顧」は、私には十分にとらえきれませんが、第1義「回头看,泛指看」を採っておきます。
 「答」は「一 da2」「二 da1」の二音ですが、後者は口語のみに用いる音なので、ここは前者、その第1義です。
 「審」は第1義。
 「詳」も第1義でよいでしょう。
 先に申し上げたとおり、「顧」の字義がとらえきれないので確言できませんが、対句になっているようです。
 『真草千字文』を見ていただくと、「真」(楷書)の「顧」が、現在の中国の簡化字に似ていることが分かります。岩波文庫本をお持ちの方は、ご確認下さい。