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060 既集墳典 亦聚羣英
  Ji4 ji2 fen2dian3, yi4 ju4 qun2ying1.

 前行に「右通廣內,左達承明」とあった廣内と承明殿について、述べられています。
 「既」は、『新華字典』の第3義「连词」の2「常跟"且""又"连用,表示两者并列」です。「既高且大」「既快又好」の例が挙がっています。文言でも「又」と呼応する場合も多いですが、『千字文』では「既」と「亦」とが呼応しています。接続詞(连词)ですから、副詞のように理解してしまってはいけません(「スデニ」と訓読して素通りしてはいけない、という意味です)。
 「集」は第1義「聚,会合,总合」、(连)として「聚集」の語が挙げられています。(连)については、『新華字典』の凡例で「注解中的(连)表示本字可以跟一个意义相同或相近的字并列起来构成大致相同义的词,不另加注解」と説明されています。このように、意味の近い字を組み合わせて2字の熟語を作ることは、中国語の特徴です。
 「墳」は1義のみですが、『千字文』には当たりません。「墳典」と熟して書物の意味です。もとは「三墳五典」で、書物の固有名詞です。
 「典」は第1義でよいでしょう。ここではむろん「五典」が意識されています。
 「亦」は1義のみ。
 「聚」は1義のみで、やはり(连)として「聚集」が挙げられています。
 「羣」は第1義「聚集在一起的人或物」。
 「英」は第2義です。
 対句になっており、「集」「聚」が述語(動詞)、「墳典」「羣英」が目的語(名詞)です。「既」は接続詞、「亦」は副詞ですが、呼応しており、対として違和感ありません。
 全体としては、宮中の廣内と承明殿とに、多くの書物と俊才が集められた、という意味でした。