110を読む

110 稽顙再拜 悚懼恐惶
  Qi3sang3 zai4bai4, song3ju4 kong3huang2.

 前行に続けて、先祖祭祀の様子を描きます。
 「稽」は、『新華字典』では「一 ji1」「二 qi3」の二音ですが、ここは後者「稽首,古时跪下叩头的礼节」です。
 「顙」は1義のみ。
 「再」は第1義「表示又一次」。
 「拜」は第1義「过去表示敬意的礼节」です。
 「悚」は1義のみ。
 「懼」も1義のみです。
 「恐」は第1義「害怕,心里慌张不安」。
 「惶」は1義のみで、「惶恐」が熟語として挙げられています。
 最後の一句「恐惶」は、同じ意味の語「恐」「惶」を重ねた語で、『新華字典』にもあるとおり、「惶恐」ともいいます。漢語では、このように同義・反義の語を二つ並べて辞を作る場合、「平」「上」「去」「入」の優先順位があるので、「惶」(平声)を「恐」(上声)よりも先に置く「惶恐」の方がより好まれ、現代ではこちらが一般的な語となったのでしょう。
 もちろん、『千字文』はこの前後、平声で押韻していますから、これを「惶恐」と言い換えることはできません。