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028 空谷傳聲 虚堂習聽
  Kong1gu3 chuan2 sheng1, xu1tang2 xi2 ting1.

 「空」は、多音字で、『新華字典』によると「一 kong1」(中古音の平声)と「二 kong4」(中古音の去声)の2音です。両者の読み分けはわりと難しいのですが、これまでも繰り返しているように、迷った時は、前者(つまり『新華字典』の「一」、より基本的な読み)に従ってください。ここはその第1義です。
 「谷」には第1義から第5義までありますが、「2-4穀」とあるとおり、第2義から第4義までは「穀」の簡体字として使われるものです。ここでは第1義です。
 「傳」は多音字で、「一 chuan2」と「二 zhuan4」の2音です。ここは前者の第2義です。
 「聲」がどんな意味なのか、これは注釈家たちを悩ませてきた問題です。第1義と第5義、どちらにも解釈可能です。こういう場合は、より基本的な義を採りましょう。つまり、前者です。
 「虚」は第1義です。「空((连)空虚)」とありますので、迷いはありませんね。前句の「空」と対になっているわけですから。
 「堂」は第1義。「習」も第1義でよいでしょう。
 「聽」は、文脈的に意味がとらえがたいですが、とりあえず第1義を採りましょう。なおこの前後は、すべて「去声」の「映韻」「勁韻」「径韻」で韻を踏んでいます。もちろん、この「聽」字も去声(径韻)です。ところが、当時、これを平声(青韻)に読む読み方もあり、現在ではこの平声の読音のみが伝わっているのです。そのような訳ですから、第1声で読むのも、第4声で読むのも、ともに誤りではないのですが、なにしろ去声の読みはずっと以前に失われてしまっているので、ここでは第1声(中古音の平声)の読みを採っておきます。
 この第28行も対を成しており、「空谷」「虚堂」がともに名詞で主語であることは疑いなく、「傳」「習」が動詞で述語、「聲」「聽」が名詞で目的語のはずですが、全体として何を意味するのか、いまひとつはっきりしません(いろいろな方が説を出しています)。謎としてのこしておいてもよいのではないでしょうか?