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027 徳建名立 形端表正
  De2 jian4 ming2 li4, xing2 duan1 biao3 zheng4.

 「徳」は、『新華字典』の第1義を採ります。
 「建」は1義のみです。
 「名」は第3義です。
 「立」は第2義「做出,定出」の2「建树:立功」が当てはまります。
 「形」は、意味的には第3義「表现」が近いと思いますが、ここでは名詞です。その熟語例として「形容」が挙がっており、1「面容」とあり、これが名詞の用法です。
 「端」は第1義の定義に「端正」の語が見えますので、「形端表正」という句も、「端正」という熟語を分割したものであるという推測がつきます。これを採りましょう。
 「表」は、第7義に「树立的标志」とあり、「表率」「华表」という2つの熟語が載っています。とくに「表率」は「榜样」と説明されており、『千字文』の文脈における「表」も、この意味でしょう。
 「正」は多音字で「一 zheng4」(中古音の去声)と「二 zheng1」(中古音の平声)の二つですが、ここでは前者、その第1義です。後者は「正月」という時にのみ用いる特別な読みです。
 上の句の文法は、「紱」が名詞(主語)で「建」が動詞(述語)、「名」が名詞で「立」が動詞、となっており、句の内部で対を成しています。下の句は、「形」が名詞(主語)で「端」が形容詞(述語)、「表」が名詞で「正」が形容詞と、同様に句の内部で対を作っています。上の句と下の句もいちおう対句で、ともに「主/述/主/述」の構造ですが、述語の品詞は違います。
 この句の意味が「紱建則名立,形端則表正」(条件と結果)であるのか、それとも「紱建而名立,形端而表正」(並列)であるのか、判然としません。どちらでも意味は通ります。後者ならば、意味的には「名立紱建,表正形端」と置き換えられますが、前者ならばそうはゆきません。こうして置き換えてみると少し不自然なので、きっと前者の意味なのでしょう。