010を読む

010 龍師火帝 鳥官人皇
  Long2shi1 Huo3di4, Niao3guan1 Ren2huang2.

 この1行については、まず、すべての字について第1義を採ってください。
 その上で申しますと、すでに昨年12月20日のエントリーに注として書いた通り、「龍師」「火帝」「鳥官」「人皇」、すべてが古代の伝承に基づく特別な名詞です。
 「龍師」「火帝」「鳥官」については『春秋左氏伝』(昭公17年)に関連する記述があります。むかしの帝王たちは、それぞれめでたいシンボルを持っていたそうで、歴代、「雲」「火」「水」「龍」「鳥」などを重んじて、それぞれの王朝の官名をシンボルによって名付けた、という話です。
 「火帝」が『春秋左氏伝』の文脈に基づいてここにあらわれているのは間違いありませんが、ここではむしろ、官ではなく、帝王(「神農」「炎帝」と呼ばれる王です)の方です。
 「人皇」についてはそれほど信頼できる資料的根拠はありません。古代の神々の世界から、だんだんと人間の世界になってきたことを表現しているのでしょう。
 第1行目の「天地玄黃」以降、第9行目まで、自然現象が縷々述べられてきたのですが、ここにいたって、やっと人間の世が始まるわけですね。この10行以降は、文明の話題となります。
 文法的にいうと、この行では単に4つの名詞が羅列されているだけです。そして、次の11行に続いています。11行とあわせて読むと、この第10行全体が、主語となっていることが分かります。