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013 弔民伐罪 周發殷湯
  Diao4 min2 fa2 zui4, Zhou1fa1 Yin1tang1.

 「弔」は、『新華字典』の第1義に「祭奠死者或对遭到丧事的人家、团体给予慰问」とあります。とりあえず、これを採っておきますが、『千字文』の文脈では、人の死に限らず「不幸を憐れむ」という、よりゆるやかな意味でしょう。
 「民」は第1義を採ります。
 「伐」は第2義です。
 「罪」は第1義でもよいのですが、そのような行為を犯した人間、というのがより正確でしょう。「民」と対になっているのですから、人間であるはず、というのがその理由です。
 「周發」「殷湯」は、すでに述べたとおり、固有名詞ですが、1字ずつ調べてください。
 「周」は第7義、「殷」は「一 yin1」の第3義に、それぞれ朝代の名として載っています。なお、「殷」の第3義には「殷朝,商朝的后期,由盘庚起称殷」とあります。現在の中国では、「商朝」(殷代全体)と「殷朝」(殷代後期)とを区別していることが分かります(「商 shang1」の第6義も参照)。『千字文』では「殷湯」といっていますし、湯王は殷(あるいは商)の初代とされているのですから、区別していないわけです。日本では「殷」と呼び、むしろ「商」はあまり用いていませんね。
 文法的に、第12行と同じ構造です。12行と13行とが、対句の関係にあります。12行同様、「弔民」「伐罪」と対が上の句に置かれ、「周發」「殷湯」という二つの固有名詞が、下の句に置かれています。
 文法的に説明するなら、「弔民伐罪(者)」の「者」が省略されたものが主語、「周發殷湯」が述語(「谓语」)、となります。そして前の句「弔民伐罪」をさらに分解すると、「弔」が述語で「民」が目的語(「宾语」)、「伐」が述語で「罪」が目的語、という対で出来ています。
 中国語を構成する文法上の要素は、「主語」「述語(「谓语」)」「目的語(「宾语」)」の3種を主とし、それを「連体修飾語(定语)」「連用修飾語(状语)」「補語」の3種で補うもので、比較的単純なのですが、それらが複雑に組み合わされ、入れ子のような構造になり、さらに漢字1字1字が多大な意味を担って、文意を構成しています。特に文言文ではその傾向が顕著です。このあたりが難しいところなのですが、まずは単純な文から理解して、次第に複雑なものへと進みましょう。