広東語で読む『千字文』


 1000字のうちの200字を終えたところですが、前日に続き、『千字文』の「音」についてもう少し考えてみましょう。
 この「文言基礎」では、現代北京音で文言を読む、という立場で学習を進めていますが、現代北京音以外に、どのような中国語の発音が存在するのかを知っておくことは無益ではありません。今日は、広東語(粤语)で読む『千字文』を紹介しましょう。
 これも非常によくできた音声教材です。個々の発音が丁寧になされているのみならず、全体に韻文らしく抑揚をつけて読み上げています。北京音での読み上げと、かなり違うことが分かります。
 私は広東語を学んだことがないのですが、それでも、平声の読み方の特徴、入声の発音の特徴などは分かります。文字を目で追いながら聴いていると、何か思い出しませんか?文字によっては「日本漢字音」とそっくりなものがあります(もちろん、日本漢字音には声調がありませんが)。
 試しに、入声の音に注意して聴いてみてください。日本漢字音の入声の発音では「カフ」「コク」「セツ」などと2音節で読みますが、それとは違い、よく聴いていないと分かりづらいかも知れません。今後、学習する予定の第82行から第91行までは、入声の文字で韻を踏んでいる部分です(6:03から始まる部分)。現代北京音で読み上げても、ここは韻を感じられないわけです。そのような場合、この広東語の読み上げは大いに力を発揮するでしょう。