029を読む

029 禍因惡積 福縁善慶
  Huo4 yin1 e4 ji1, fu2 yuan2 shan4 qing4.

 この1行は、対句であるのですが、2通りの文法的理解が可能です。すなわち、「因」「緣」を述語とする理解と、「積」「慶」を述語とする理解の二つです。ここでは前者に従って理解しておきます。
 「禍」は『新華字典』第1義に「灾殃,苦难,跟“福”相对」とありますので、迷わずにこれを採ります。
 「因」は、解釈の分かれるところですが、ここでは述語(動詞)と考えますので、第5義に当たります。この句の述語を「積」と考えるなら、第2義が該当するでしょう。
 「惡」は多音字で「一 e4」「二 wu4」「三 e3」「四 wu1」の4音があります。その「一」の第3義に「跟“善”相对」とありますので、これを採ります。この字の読みわけは一見面倒ですが、難しくはありません。よく理解しておいてください。
 「積」は第1義を採ります。
 「福」は1義のみ。
 「縁」は、述語と考え、第1義を採りますが、『新華字典』の説明がいまひとつ曖昧で、品詞をどのように考えているのか、はっきりしません。この対句の中では、動詞に当たります。
 「善」は第2義。「慶」も第2義でよいでしょう。
 文法的には「禍」「福」が主語、「因」「縁」が述語、「惡積」「善慶」が目的語、と考えておきます。しかし、問題が残ります。「惡積」「善慶」の二つが不明瞭なのです。特に「積」「慶」の文法上の機能がよく分かりません。『易』坤卦の文言伝に「積善之家,必有餘慶。積不善之家,必有餘殃」を典故としていることには疑問がないのですが、残念ながら、不明瞭さが残ります。