新華字典を買う

 この「文言基礎」では、現代中国語と文言とを一緒に学んでしまうことを目標とします。語学の学習のためには、辞典が必要です。現代中国語の辞典については、中国語の先生の指示に従ってください。小学館の『中日辞典』を推薦する人が多く、この辞典は電子辞書などにも多く採用されています。
 しかしながら、私個人の考えとしては、初歩の現代中国語学習においても、やはりなるべく「翻訳」に頼らない態度がよいと思います。辞典が必要ならば、中国で作られた辞典を使えばよいのです。よく用いられるのは、『新華字典』と『現代漢語詞典』という、二つの辞典です。この二つの辞典は、いずれも商務印書館という中国の出版社から出ています。
 『現代漢語詞典』については、機会をあらためて説明するとして、ここではまず『新華字典』(《新华字典》)を紹介しましょう。
 『新華字典』は、1953年に初版の出た、最も標準的な現代中国語の小型「字」典です。2008年現在、第10版(2004年版)が最新版となっています。「字典」なので、基本的には一文字一文字の漢字を調べるためのものですが、熟語なども少しだけ載っています。中国では小学生以上が用いているそうで、累計4億冊以上を売り上げているとのことです。
 この字典は、現代中国語(现代汉语)の字典でありながら、中国語の歴史を十分に踏まえて作られているので、中国で「古代漢語(古代汉语)」「古漢語(古汉语)」などと呼ばれている、「文言」を読む際にも利用できるのです。専門家であっても、また中国人であっても、この事実を知らない人がたくさんいるのは、憐れむべきことです。
 たとえば、『論語』を読んでいるときに、分からない文字に出会ったとして、この字書を使えば、ほとんどの場合、その発音と意味とを見いだすことが出来ます。この字書の発音と定義は、きわめて信頼性の高いものです。
 私は19歳のころ、『新華字典』を初めて買いましたが、それ以来、ほぼ毎日この字典を愛用しています。旅行にも必ず携帯します。これから先も、手放すことはないでしょう。私がこの世で二番目に好きな辞典です(一番好きな辞典は?いつか、白状しましょう)。
 初歩の段階では、この字書の定義を読み取ることはかなり困難だと思いますが、なにしろ小学生でも使えるように作られているのですから、中国語の初級者が用いるのもまったく無理ということも、ないでしょう。発音練習をする際、こまめに『新華字典』で漢字の発音を確認する、というところから始めて、この字書に慣れてください。
 なお、この字書のような中国書は、それらを輸入販売している専門書店で取り扱っており、近年では、オンラインでも購入できます。『新華字典』は1000円程度です。また、東方書店という日本の出版社が、中国版とほぼ同内容のものを日本で印刷・製本して販売しており、こちらのビニール表紙と薄い用紙が好みという人もいます。
 それ以外に、『新華字典』を日本語訳した「日本語」版もあるのですが、これを買って『新華字典』の代用とするのはおすすめできません。「中国語を中国語により理解する」からこそ、意義があるのです。
 具体的な『新華字典』の使い方については、おいおい説明してゆきたいと思います