千字を学ぶ

 あなたは漢字を何文字ほど知っていますか?中国文化に関心をお持ちの方ならば、一般的な日本人より多くの漢字を読み書きできることと思います。
 ただし、忘れないでください、この「文言基礎」では、新たに外国語として「漢字」および「漢語」を学ぶわけです。「形」の認識は、基本的に日本の漢字の知識を流用できるのですが、「音」(発音)と「義」(意味)は新たに外国語として覚え直していただきましょう。「音」は、現代北京音を覚えることを当面の目標とします。
 そこでまず、『千字文』を教材として、千文字を覚えます。梁(502―549)の時代の周興嗣という人物が作ったという識字書です。この書物の全文はちょうど1000字からなっています。1句が4字、2句8字がひとまとまりでして、この8字が基本の単位です。1000を8で割ると125となりますので、125行を覚えると全文を習得できるわけです。暗誦しやすいように、韻文でできています。
 このような韻文で書かれた識字書は、かなり古くから作られ、また使われてきました。「蒼頡作書」で始まる『蒼頡篇』や、「急就奇觚与衆異」で始まる『急就章』などがその例です。「小学書」と呼ばれ(「小学」というのは、子供の勉強という意味です)、初等教育に用いられたのです。『千字文』はその後を受け、たいへんによくできています。これを利用しない手はないでしょう。
 『千字文』の全文を完全に暗誦できることは、ひとつの理想ではありますし、記憶力のよい人なら無理ではないでしょうが、すべての学習者にそこまでは求めません。「本文を流暢に読み上げられ、意味も大体は分かる」という程度を目標としましょう。
 また発音を自分で調べるのは時間がかかりすぎますので、このサイトで発音を明示する予定です(むろん、現代中国語の発音を修得した人が対象です)。
 しかし、字書を引いて意味を調べるのは、あなた自身です。一文字、一文字、つまり1000回分、『新華字典』を引いてもらうことになります(急いで『新華字典』を入手してください!)。そして、繰り返し音読を練習して、なめらかに文句が口にのぼるようにするのです。具体的な学習法は、あらためてご紹介します。